「ふくおか・さが民医連新聞」2021年5月15日第567号に掲載された記事をご紹介します。
「ホームレス医療支援の今~社会を知り、人を知り、成長できた活動~」
有馬泰治(公益社団法人福岡医療団千鳥橋病院 総合内科科長)
医療支援を始めようと思ったきっかけは、当時だんだんと増加していくホームレスの方の救急受診や入院に対して、何が起きているのかを知りたいという関心と、自分には何ができるのかという思いでした。
ホームレスの診療において医学的介入だけでは不十分でさまざまな角度からサポートが必要になります。チームの力で多くのケースを解決し、良いことを行っているとは思いましたが、疲労感や陰性感情がありました。
病院という枠から抜け、現場に出て直にホームレスの方と話をしたい、同時に医学生委員長として学生にも現場を知る機会を作りたいと思い始めました。
活動を続けて10年以上経過しました。振り返ってみて、医療支援の活動は私にとって「社会への窓口」だったと思います。
▲福岡おにぎりの会の炊き出しに並ぶ方々
医療職は、病院という白い箱の中で、医療を提供する立場として、患者さんに医療を強制しがちです。医学的に正しいことがその人にとって正しいこととは限りません。公園では、ホームレスの方がなかなか病院では言えないことを教えてくれます。間違っていると感じることもありますが学ぶことも多いです。ホームレスの方は、人生の先輩だと私は考えます。仕事に就きそれを失ったこと、結婚し離婚したこと、親を亡くしたこと、人に騙されたこと、さまざまな人生経験が私の勉強になります。社会を知り、人を知ることができます。
ホームレスへの医療支援は一発だけの企画にしたくないと思い一隅を照らす気持ちで細々続けてきました。学生さんへの講演の機会を得たり、院外の方と出会い一緒に勉強会をする機会も得て私は成長することができました。
少し足を踏み出そう
ホームレスの支援の活動は一つの社会活動ですが、世の中には他にも問題があります。子どもの貧困、外国人の貧困、私もいろいろ気になります。職員の皆さんは病院の中の活動も大事ですが、社会につながる活動にも参加してほしいと思います。少し足を踏み出せば面白い出会いがあることと思います。
▲医療相談に応じる有馬医師
*転載許可確認済み。
ホームレス医療支援ネットワークのページ
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千鳥橋病院臨床研修課(担当:今井・砂川)
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