千鳥橋病院には日本プライマリ・ケア連合学会が認定する家庭医療後期研修プログラムがあります。初期研修2年を終えた医師が、家庭医療専門医を取得できる後期研修コース(3年間)です。現在、09年卒1名、10年卒1名、12卒2名の後期研修医が研修を行っています。
当院のプログラムでは外来、病棟、診療所での日々の実践はできているのですが、まだ歴史も浅く、家庭医療学(家庭医にも家庭医としての哲学やアプローチの手法など学問がある)の講義を行ったり、後期研修医がポートフォリオ(日頃の経験を綴り、感じ考え挑戦したことをまとめたもの)をまとめ、それをみんなで議論することがなかなかできていませんでした。
今回、プライマリ・ケア連合学会の理事であり、生協浮間診療所の所長をされている藤沼康樹先生をお招きして、講演とポートフォリオ大会を開催しました。
講演では、「総合診療を専門とする医師の臨床能力(コアコンピテンシー)」についてお話を伺いました。都市部の医療における総合診療の役割の話では、高齢者医療の難しさがあり、多剤投薬の問題などがあること、ここに総合診療医の果たすべき役割があることを知りました。また、疾患の治療やマネージメントだけではなく、多職種によるチームを形成しチームで問題を解決していくこと、日頃から地域のリソースについて把握してくことが大切だと知りました。その後、総合診療医が身に着けておくべき、コア・コンピテンシーの設定の経過と中身について学びました。扱う問題の広さと多様性、地域を診る医師の視点、多職種連携、在宅医療、緩和ケア、高齢者ケア、予防・健康増進などについて話がありました。日頃私たちが実践していることがすなわち総合診療医の役割であることがわかりやすく整理することができました。
ポートフォリオ大会では、福岡・佐賀・長崎・熊本から4名の後期研修医の発表がありました。それぞれに、医学的だけでなく、心理・社会的問題を抱えており学びになる発表でした。藤沼先生からのフィードバックもどういうところに着目しポートフォリオの考察を深めるのか、学問的にはどのようなアプローチがあるのか指導医の学びになりました。
大会終了後の懇親会でも、藤沼先生や九州・沖縄の家庭医療指導医・研修医との交流を深めることができました。今後も継続して取り組みを続けていきたいと思います。